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2010年05月 アーカイブ

防人歌にみる防人たちの心情

交通手段の発達していない当時のことですから、徒歩、船、そしてまた徒歩と進む防人派遣の道のりは厳しく、数ヶ月にもわたる長い旅となりました。

難波津からは朝廷の兵として食糧が配給されましたが、そこに至るまでの間の食糧は自己負担・・・。

ただでさえ貧しい農民にとってはつらい旅だったと想像されます。

さらに故郷を離れた旅路のことだから、精神状態が不安定になったり、病いで倒れる防人も多かったことでしょう。

そんなときに思い出されるのが故郷に残した家族のこと。

それは今も昔も変わりません。


我が妻も 画にかきとらむ 暇もか

旅行く吾は 見つつ偲む


この歌も万葉集巻20から、作者は物部古麻呂という防人です。

「遠く九州北辺の警固に向かう自分としては、旅先で自分の妻を描いた絵を見たいので、その絵を描く時間が欲しい」という気持ちを表現しながら、愛する妻を残してゆくことのつらさを詠み込んだものです。

防人歌にみる防人たちの心情 2

妻ばかりでなく、父母を思いやる歌も防人歌には多いです。


大君の 命かしこみ 磯に触り

海原渡る 父母を置きて


作者は、助丁丈部造人麻呂(はせつかべのみやつこひとまろ)という防人です。

天皇の命を承って、磯にぶつかりそうになりながらも波の荒い海を渡り、防人として九州に向かう自分の姿を詠んでいます。

しかし、この歌でわたしたちの心をひくのは、「父母を置きて」というところでしょう。

東国の民である防人たちが朝廷に対して恭順の意を表すには、つらいことであっても防入の任務に就くことが一番でした。

だからこそ、この作者は「大君の命かしこみ」とまず詠んだのでしょうが、それだけに父母を故郷に残してきた悲哀が、歌中にかえって対照的な強さをもって響いています。

万葉集の魅力のひとつは、技巧よりも、こうした個入の素朴な感情を重視した歌が数多く集められているところにもあります。

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